【favoritism】
お気に入りの歌が
私にはある
少年は
いつの時代も
ナイフを持てば
自分が一番強いと思うのだろう
私はそれを悲しく思い
どこかで昔に聞いた
ピッチカートの音色を頭に浮かべた
弦の脆さを苛立たしく感じるのは
奏者の腕が未熟だからだと耳にした
あの
地中海の匂いを覚えている
私のいっとう気に入りの歌
双子の子供が出てきて
小さな話をする歌だ
二人はある朝
互いに目覚めて
眠たそうに
頭を掻いて
恥ずかしそうに
見つめ合って
そして二人は口付けあって
ずっと幸せになれない
そんな歌
どうしてこんなにも愛しあったのか
結ばれやしないのに
少年は口付けたあと
少女の太股の内側に
指を這わしてさめざめ泣いた
どうしてこんなにも愛しあったのに
結ばれやしないのか
少女は口付けたあと
少年の広い生身の胸に
頬を擦り寄せ静かに泣いた
同じ血が
どくんと二人に
流れる音が
同じ二人によく響く
私のいっとう気に入りの歌
最後の節を思い出せない
何を呪えば良いものか
分からず仕舞いに
流れる旋律
禁忌の子らであることを
恨み悔やんで話を続ける
「来世で互いに結ばれよう」
そう言ったのは
どちらだったか
私のいちばん
好きな歌だ
世にも悲しい
愛の歌だ
曲のおわりに少年が
枕脇から取り出した
光る銀のナイフのゆくすえは
私は未だ知らないでいる
いわゆるありがちな間違い&ありがちな書き方…